Release Information

アントニオ・ロウレイロ 「ソー」
Antonio Loureiro "Só"

2012.11.28 on sale

CD定価¥2,484(税込) NKCD-1005 (qb002)
発売元: NRT / quiet border
販売元: BounDEE by SSNW


野性とインテリジェンスの不可思議な同居。
<ソング>と<インストゥルメンタル>のあいだに広がる、都市の音楽。
ミナスの静寂を漂わせる歌、コンテンポラリー・ジャズの現代的タッチ、
エレクトリック・マイルスのカオスまでを飲み込む若き才能。
<quiet border>第二弾リリース作品。


試聴プレイヤー(※アルバムより3曲フル試聴できます)


◆作品について
まったく新しい音楽との出会い。その驚きと喜び、戸惑いさえも不可避の音楽が、21世紀のミナスから誕生した。
弱冠26才のシンガーソングライター/マルチ奏者/作曲家、アントニオ・ロウレイロの2ndアルバム。

前作『Antonio Loureiro』がミュージックマガジン誌「ベストアルバム2010」にて高橋健太郎氏(音楽評論家)に1位選出されるなど、話題をさらった前作からもネクスト・レヴェルに到達した内容。
現代ブラジルを代表する女性シンガーのタチアナ・パーハ、アルゼンチンのスーパートリオ、アカ・セカ・トリオのピアノ奏者アンドレス・ベエウサエルト、ブラジル北東部の雄シバ、アレシャンドリ・アンドレスをはじめとしたミナスの若き精鋭たちをゲストに迎えつつ、ヴォーカル、ピアノ、ヴィブラフォン、キーボード、ローズ、ドラムス、ベース、アタバキ、ヴィオラなど多数の楽器を操り完成させた。
NRTの新シリーズ<quiet border>第二弾。


◆RECORDING DATA
Antonio Loureiro: piano, vocal, vibrafon, rhodes, keyboards, drums, atabaques, electric bass, viola brasileira, efectors and samplers
Tatiana Parra: vocals (M10)
Andrés Beeuwsaert: piano, chorus (M10)
Alexandre Andrés: flutes (M2)
Rafael Martini: vocals (M2), accordion (M5), chorus (M10)
Daniel Santiago: acoustic guitar (M2)
Sérgio Krakowski: pandeiro (M2)
Siba: vocal (M3)
Thiago França: saxofones (M3)
Federico Heliodoro: electric bass (M4)
Santiago Segret: bandoneon (M4)
Trigo Santana: contrabass (M5)
Pedro Durães: programming (M7)
etc.


◆TRACK LISTING
01. PELAS ÁGUAS (Antonio Loureiro) 水を想う
02. REZA (Antonio Loureiro)  祈り
03. CABE NA MINHA CIRANDA (Antonio Loureiro/Siba)  私のシランダ
04. LINDEZA (Antonio Loureiro)  美しさ
05. SÓ (Antonio Loureiro)  ソー
06. PARTO (Antonio Loureiro/Thiago Amud)  出産
07. PASSAGEM (Antonio Loureiro)  通路
08. ANTIDOTODESEJO (Antonio Loureiro)  欲望解毒剤
09. BOI (Antonio Loureiro/Makely Ka)  ボイ
10. LUZ DA TERRA (Antonio Loureiro)  地上の光


試聴プレイヤー (※アルバムより3曲フル試聴できます)


『Só』アルバムEPK(英語字幕)

「Lindeza」スタジオ・ライブ映像 ※本CDの録音とは異なります


◆野性とインテリジェンスの不可思議な共存 ―― アントニオ・ロウレイロをめぐる謎

『Só』にはいくつものテクスチュアがひそんでいる。
ロウレイロの歌世界の背景には、キャリアをスタートさせたブラジルの都市、ミナス・ジェライスの州都ベロ・オリゾンチの影響が感じられる。土地ごとにいくつもの豊かな個性と文化をもつブラジルの地方のなかでも、教会音楽やバロックがフォークロアのうちに吸収され、分かち難く結びついたミナスは、内省的で、高度に熟成したポピュラー・ミュジックの温床として名高い土地だ。ミルトン・ナシメントの深遠な音世界や、ロウレイロがそのキャリアを培ったトニーニョ・オルタ、ヘナート・モタ&パトリシア・ロバートなどミナス勢との共演から、その深く呼吸するような楽曲性を培ったことは確かだろう。そうした土壌のもと、本作にも参加しているハファエル・マルチニ、アレシャンドリ・アンドレスらミナス新世代の仲間たちと切磋琢磨することで、目の覚めるような閃きと勢いに満ちた本作が生まれたことは疑いがない。

高度な作曲と器楽演奏という点では、エルメート・パスコアル、エグベルト・ジスモンチというブラジル音楽史を飾る二大巨匠からの影響は、直接・間接を問わず大きいに違いない。前者は北東部音楽の豊かな伝承と実験を、後者はアマゾンの原風景からくる広大なスケールを自身の音楽的血脈として注ぎ、ジャズやクラシックなどの音楽的言語にも一部依拠しながらオリジナルな音楽を打ち立てている音楽家で、ロウレイロの音楽から聞き取れる野性的な躍動感と、さまざまな楽器を駆使してどこにもない音楽を想像する方法論はその系譜に連なるものだ。そして彼はそこに現代的な感性を加えることで、新たな地平を切り開くものだ。そのうえ彼は、巨匠たちでさえ十分に踏み込んでいない<ソング>と<インストゥルメンタル>の壁の向こうにやすやすと抜け出し、まったく新しい音楽のかたちを繰り広げてみせる。

ブラジル性をあらわす例としてロウレイロ自身が挙げるところによれば、M1 “Pelas águas”に見られるトゥピ・グアラニ語(南米先住民言語のひとつ)の使用や、ブラジル北東部に伝わる民族劇<ブンバ・メウ・ボイ>にインスパイアされたというM9 “Boi”にその一端を垣間見ることができる。M3 “Cabe na minha Ciranda”で共作と参加をしている北東部の雄、シバとの交流も長きにわたるという。
また隣国アルゼンチンのミュージシャンとの交流も、南米音楽に近年起こっているあたらしい潮流をリードするものといえる。アルゼンチン・モダン・フォルクローレを代表するスーパー・グループ、アカ・セカ・トリオのピアノ奏者アンドレス・ベエウサエルトと、タンゴをふくむフォルクローレからジャズ・インプロヴィゼーションまでをこなす話題のバンドネオン奏者サンティアゴ・セグレトの参加と交流は、この大陸の音楽的プログレスを予感させる嬉しいニュースだ(この潮流を象徴する作品には、カルロス・アギーレ『オリジャニア』、アンドレ・メマーリ『カンテイロ』などがある)。アンドレス・ベエウサエルトとの双頭アルバムを持つシンガーで、いまやブラジル屈指の実力派歌手として知られるタチアナ・パーハの参加もある。

ロウレイロの第二の声ともいうべき、リリカルなピアノの響きには都市生活の光と影が見え隠れして、それゆえ国境を超えてわたしたちの胸を打つ。自身も影響を認めるブラッド・メルドーなど、コンテンポラリー・ジャズのサウンド・アイディアと現代的質感は本作に見逃せない音楽的要素のひとつだ。豊かな叙情性、そして静けさとともにある歌の世界と、エレクトリック期のマイルス・ディヴィスを思わせるパワーと混沌の奇妙な同居という、まったく奇妙な美しさに満たされた作品『Só』。未知の音楽の誕生、その瞬間に立ち会うことのできたものだけが吸いこむことのできる空気が端々にあふれている。

『Só』はこれまでに彼が辿ってきた豊かな音楽背景から生み出された作品であることは間違いないが、同時にそれは伝統に囚われない自由な実践でもある。M7 “Passagem”は、ピアノのランダムな和音に基づく作曲方法が取られたという。「ピアノの和音と和音のスペースに、即興でドラムスを演奏して、同じようにランダムに声のコードを重ねたんだ」。この曲は、素材にこだわらずとも彼が美しい音楽を生み出せることの証左といえる。ミナス・ジェライス連邦大学で作曲と鍵盤打楽器を学んだロウレイロは、現代音楽のサウンドや作曲家にも敬意を払っており、そうした文脈から読み取れるアルバムでもある。

「<ソング>と<インストゥルメンタル>のあいだに壁はない」。本人がそう語るとおり、さまざまな音楽の境界をくぐりぬけ、再構築し、もしくはあらかじめ境界のない地平にひろがるアントニオ・ロウレイロの音楽。その世界は大きな謎と驚きから成りたっている。
最後に付け加えれば、詩人としての魅力も本作を特別なものにしている大きな要素だ。ブラジル文化への深い洞察を覗かせる詞も多く、人間と自然、文明と野生の共生というより大きなテーマがその背景にうかがえる。
野生とインテリジェンスの不可思議な共存は、その音楽の最大の魅力であり、謎でもある。


◆profile
ブラジル・サンパウロ生まれ、現在26才。ミナス・ジェライス連邦大学にて作曲と鍵盤打楽器を学ぶ。
2000年よりプロとしてのキャリアを開始。トニーニョ・オルタ、ヘナート・モタ&パトリシア・ロバートをはじめとした多数の作品やライブに参加、キャリアを重ねる。グループ「A Outra Cidade」「Ramo」のメンバーを経て、2010年に初のソロ・アルバム『Antonio Loureiro』を発表。この作品が日本でもミュージックマガジン誌「ベストアルバム2010」にて高橋健太郎氏(音楽評論家)に1位に選出されるなど、話題となる。ポルトガル、フランスでもツアーを行い、国際的に注目を集める。隣国アルゼンチンのアーティストとの交流も盛んで、アカ・セカ・トリオ、ディエゴ・スキッシといった最注目アーティストたちとも共演するなど、ミナス=サンパウロ=アルゼンチンを核とした南米の器楽系ルネッサンスの中核的存在ともなりつつある。
現代ブラジルでその将来をもっとも嘱望されるマルチ奏者であり作曲家、シンガーソングライターである。


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