2012.01.24

マリーザ・モンチ 『あなたが本当に知りたいこと』 ディスクレビュー

イントキシケイト誌に寄稿した、マリーザ・モンチ『あなたが本当に知りたいこと』のディスクレビューがTOWER RECORDS ONLINEでもお読みいただけるようになりました。

TOWER RECORDS ONLINE > Marisa Monte 『あなたが本当に知りたいこと』

マリーザ・モンチのサウンドの秘密は、その楽器の組み合わせの妙にある。
2ヶ月ぶりぐらいにこの新作を聴き直してみて、改めてそのように思った次第です。
ライブでもまた体験したいものですね。

2012.01.22

An interview with Kip Hanrahan

現在発売中のラティーナ2月号にて、キップ・ハンラハンに行ったインタビュー記事が掲載されています。

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昨年末の来日時に行った取材記事で、5年ぶりの新作『At home in anger』の話題を中心に色んな話を訊くことができた。
以前のエントリーにも書いたけれども、この人の話は脱線の類いが何しろ面白く、泣く泣く削った逸話もたくさんあって……そういう意味では書き手として完全に満足とはいかないものの、それでも一般的なライナーノーツの倍近く、5600字のボリュームで掲載してもらうことができた。
キップが語るシコ・ブアルキ、そして幻に終わったアストル・ピアソラとシコのレコーディングについての逸話もあり、彼の音楽に特別の興味がない方もお目通しいただければ。キップ本人名義の全作品ガイドも紹介しています。他ページではカルロス・ヌニェス&ジョゼ・ミゲルヴィズニッキの快(怪)作『Sem mim』のディスクレビューも執筆しています。

2012.01.17

2012.1.19 Ustreamイベント "Elis, para sempre!"

没後30年をまもなく迎えるブラジルの国民的歌手、エリス・レジーナ。そのメモリアル・イベントに成田佳洋が出演します。
トークに参加するほか、DJは21:35からを予定。
DJといっても、アッパーなものは他の出演陣におまかせして、この日はミディアム~スロウな曲をかけたいと思います。私の好きなエリス、ということで。
来日公演(79年)を原体験されているのは中原仁さんのみ、あとはほぼ30歳代の出演陣に、エリスはどう響いているのでしょうか。ホスト役、オレンジペコーのライブもあります。
画像以下、公式インフォです。

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Ustream special event
『Elis, para sempre!』
2012年1月19日(木)21:00~24:00
http://www.ustream.tv/channel/elis-para-sempre

ブラジルの国民的大歌手であるElis Regina。
36歳という若さでこの世を去ったその後も、ブラジルだけに留まらず遠く離れたここ日本でも、
愛好家のスピーカーから、カフェやショップのBGMに、クラブのダンスミュージックとして…たくさんの人々に愛され続けています。
そんな彼女の没後30年の命日である2012年1月19日に、
エリスとブラジル音楽を愛する豪華なゲストと共にお送りするUstreamスペシャルイベント、Elis, para sempre!。
orange pekoeをホストとして、
中原仁(J-WAVE , Saude! Saudade...)、成田佳洋(NRT)、KTa☆brasil、松岡matzz高廣(quasimode)、
櫻井喜次郎、斉藤良&サプライズゲスト!
それぞれがエリスへの想いを語り、さらにDJや生演奏で彼女を讃えます!
エリスを愛する方はもちろんのこと、まだ彼女を知らないという方も、エリスの魅力をたっぷりと楽しめる一夜です。

ナガシマトモコ(orange pekoe)
藤本一馬(orange pekoe)
中原仁(J-WAVE , Saude! Saudade...)
成田佳洋(NRT)
櫻井喜次郎(Milford Sound)
KTa☆brasil
松岡"Matzz"高広(quasimode)
斉藤良  …and Special Surprise Guest!!

2012.01.04

2012年の、静かなる。

ここ2年ぐらいになるだろうか。クワイエット、とか、静かなる、というキーワードで語られはじめた一群の音楽がある。
誰がそう呼び始めたかわからない。
メディアで華々しく取り上げられているというわけでもない。


その形容詞からストレートに連想されるのは、クラシックの室内楽だろうか。音楽的にはどこかでつながっているように思えるけれど、そのものずばり、ではないらしい。
なのになぜかそのひとことで、どのような音楽のことをさしているかわかる。
ざっと数百~数千人ぐらいのサークルのなかで、現在それは共有されている。


ぼくの周囲で代表的なものとして話題にのぼるアーティストは、こんな感じだ。

アルゼンチンのピアニスト/シンガー・ソングライター、カルロス・アギーレ。ギタリストのキケ・シネシ。
ブラジルのシンガーソングライター・デュオ、ヘナート・モタ&パトリシア・ロバート。ピアニストのアンドレ・メマーリ
日本のピアニスト、中島ノブユキ。ギタリストの藤本一馬


国もカテゴリーもばらばらだけれど、それまでになかったある空気、ムードをまとった音楽家たち。
個人的には北米のミュージシャンたち、たとえばジョアンナ・ニューサムやアントニー・アンド・ザ・ジョンソンズの音楽もそこに連なるものがあると思う。欧州にもそうした音楽が数多くあるし、人によってさまざまなものがここから足し引きされるに違いない。



ところであの去年の3月以降、ぼくもなかなか音楽を聴く気分になれずにいた。
そもそも朝から晩までレコードを流し続ける習慣からはなれて、けっこうな時間が経っていることもあった。音楽は死なない、という合言葉のもと、テレビや街頭のスピーカーから、隣人の携帯電話から、あらゆる時間と場所にまでそれら音楽が押し寄せてくることにも、いいかげん辟易していた。
だからあの事故の後、あの悪しき計画停電によって静まりかえった街のようす、ほかに何も照らすもののない夜空の素朴な美しさに、自分でも意外なほどほっとしたのだ。スピーカーから響いてくる音楽よりもこどもたちの話し声に耳を傾けていたかったし、自分がその時間をどう過ごすべきかに耳を貸したかった。数日後にも関東全域が死の灰につつまれて滅びてしまうかもしれないのだから。

ぼくが「クワイエット」なるひとつの傾向を、はじめて自分のものとして、いちリスナーとして意識するようになったのは、その3月以降だ。もちろんこれまで何年もヘナートとパトリシアのレコードをつくって、紹介しつづけてきたのだし、一昨年前からは藤本一馬のアルバム制作と宣伝に取り組んできたから、もとより自分のなかでの矛盾はない。2010年ごろから、身近なところでその不思議な符合が話題になる機会も多くあった。ただぼくのなかでそれは、単に自分や、自分と近しい一部のひとびとの趣向のひとつ、共通点の一端であり、それ以上の何かであるとまでは受けとめていなかった。けれど去年はそれまで以上に、行く先々、会う人ごとに、それらがひとつの同じ音楽の仲間であり、またそのように紹介されてしかるべきものと考えられていること、またそうした音楽の視点、聴き方が定着してきていることに気づかされた。そして地震以降、さらに放射能汚染のさなかにあって、これらの音楽がひとかたまりのものとして、自分のなかに残った。浮き彫りになったのは、むしろその他多数の、集中して聴くことのできなくなったもののほうで、たとえば何が難しいといって、いまの状況と本質的なつながりのない音のなかに身をひたすということが、なかなかできない。「音楽は死なない」はその最たるものであるように思う(以降はこれを<死なない音楽>と名づけることにしよう。それらはほんとうに次から次へと出続けることをやめず、消費されることじたいを目的化して生み出されているのだ)。



あるいはいっそ、音楽なんて、一度ぜんぶ死に絶えてしまったほうがいいのかもしれない。
そうしてその後に立ち上ってくる、ひとつひとつの顔をもった静かな声が、
<死なない音楽>に掻き消されることなく、それを必要としている誰かの耳に届けばいい。
そのような時代観にありながら、それでもなお寄り添うことのできるものがあるとしたら、それはどんな音楽だろう。


それは少なからず、数十年、あるいは数百年の時を超えたスケールをもつものになるはずだ。
自然のいとなみをテーマとしたものかもしれないし、
あるときは街に刻まれたひとびとの息吹のようなものかもしれない。
いずれにしてもいま生きている時代にありながら、
その背景として横たわる時間の流れを汲み取ることでうまれた、もしくはその俯瞰自体を描いたものではないだろうか。
10万年後の未来に遺恨を残したわれわれにふさわしい音楽があるとすれば、そのような音楽だけなのだから。
クワイエットと聞いて真っ先にうかぶ「静寂」の意味は、音楽そのものというよりむしろ、それを求める聴きての内に宿るものであり、そうした時間感覚への心の動き、だと思う。


2011年はそれらが顕わになった。そして彼ら音楽家どうしの交流がそれまで以上に進行した年でもあった。
2012年には彼らの新譜が数多く予定されている。そのいくつかは、来日公演も実現するかもしれない。
そうした音楽と、音楽家との出会いを今年は何よりも楽しみにしている。

今年もまた、コンサート会場で会いましょう。


――― 補足: 「静かなる音楽」、その紹介例 ―――

●ライター栗本斉さんのブログ記事 「2010年の終わりに。静かなる音楽」
...旅とリズム...旅の日記 by 栗本斉... > 「2010年の終わりに。静かなる音楽」
ミュージック・マガジン2011年1月号の記事補足。おそらく初めて雑誌媒体に掲載された、「静かなる」についての考察。
●「クワイエット」な音を紹介するフリーペーパー“Quiet Corner”。発行はHMV。web上でも読むことができる。
HMV > Quiet Corner
●上記の編集人、山本勇樹さんも参加する選曲チーム "bar buenos aires"のhp。
bar buenos aires

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NRT
Samba-Nova Collection発売元
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PROFILE

プロフィール
成田佳洋:
NRTレーベル主宰。
CDシリーズ/ラジオ・プログラム/DJイベント "Samba-Nova" プロデューサー。
音楽ライター・DJ・選曲家として、ワールド・ミュージック全般を中心に、ジャズ、クラブ・ミュージック、ロック・ポップスまでをフィールドとして活動中。ライナーノーツ多数。
最近の主なプロデュース作品: 藤本一馬『SUN DANCE』、ヘナート・モタ&パトリシア・ロバート『イン・マントラ』、Tomoko Miyata『Secret of life』など。

74年東京生まれ。96年よりレコード会社勤務、その後外資系CDショップにてワールドミュージックおよびジャズのバイヤーを5年勤めたのち、02年に初めてブラジルに渡航。当初レコード・ショップ開業のため、買い付け目的での滞在が、現行シーンのあまりの面白さと、その背景の豊かさに触れ、レーベル開業を決意。帰国後レコード会社勤務を経て、04年にNRTをスタート*。音楽の一方的な「啓蒙者・紹介者」としてではなく、「共有者」としての視点をベースに、CDリリース、原稿執筆、ラジオ番組・店舗空間等の選曲・構成、レコーディング・ライブ・DJイベントの企画・制作など、多岐に渡る活動スタイルをテーマとしている。

*08年8月よりmaritmo株式会社として法人化。現在、同社・代表取締役プロデューサー。(レーベル名としてのNRTはそのまま継続。)
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