2011.01.19
文化放送「くにまるジャパン」に出演します
2011.01.10
Best Disc 2010 【All Genre】 Mariana Baraj "Churita"
ダントツの一位、かもしれない。
●Mariana Baraj /Churita
アルゼンチンの女性シンガーが、初めて全曲を自身の楽曲で構成した傑作アルバム。
チャランゴやパーカッションを演奏し、歌うシンガーで、楽曲はフォルクローレに依拠しているのだが、それまでカヴァー中心でやってきたことが信じがたいほど完成度の高い、優れたソングライティング。伸びのあるボーカルを、より自由に、奔放に表現するべく作られた、自分がよりよく歌うことを目指して作られた楽曲であるようにも聴こえる(そういうの好きだね~)。それまでのアヴァンな、または音響派的なアプローチを通過して、赤や茶を思わせるカラフルな印象、大地を感じさせる力強い歌とサウンドを獲得。深い深い夜の闇を感じさせる曲でのコントラストも、お見事。
○
他にも、
Flying Lotus /Cosmogramma
The Chiftains feat. Ry Cooder /San Patricio
Daniel Bernard Roumain /Etudes 4 Violin & Electronix
Antony & The Johnsons /Swanlights
Seeda /Breathe
これらの作品は強く印象に残った。
再発ものでは、
Esteban Jordan /Ahorita
これにつきる。
今年もたくさんのいいレコード、素晴らしいコンサートに出会えますように。
楽しい一年を!
2011.01.10
Best Disc 2010 【All Genre】 Carlos Aguirre Grupo "Carlos Aguirre Grupo"
順不同/本日の2位。
●Carlos Aguirre Grupo /Carlos Aguirre Grupo
ご存知の方が多いかもしれないけれど、念のため。アルゼンチンのコンテンポラリー・フォルクローレ・シーンを代表する作曲家/シンガー/ピアニスト、カルロス・アギーレの記念すべき1stアルバム。現地での発売は2000年だが、まるで2010年の日本でリリースされるのを待っていたような作品、と言ってみる。
フォルクローレ、と聞いた途端「コンドルは飛んでゆく」が脳内再生された貴方に、真っ先に差し出されるべきアルバムかもしれない。
不思議な揺らぎの感覚があるレコードである。彼の生活拠点に隣接する、パラナ河のせせらぎに影響を受けたサウンドで……常套句のように語られるそんな説明も、あながち間違いでもないように思える。
もし本当にそうであったならどれだけ素敵だろうか、今すぐパラナまで確かめに行きたい、その風景をこの目で確かめに行かない人生なんて、、、聴くたびに、呪文のように、そんな思いが頭をかすめる。
グループを構成している二人のギタリストと、ベースプレイヤーの演奏が素晴らしい。ゆるやかな風、ミナス音楽にも通じる浮遊感、水面にちらちらと反射する光の屈折。そんなイメージを生むサウンドは、この3人の貢献によるところが大きいと思う。秋に実現したソロでの来日公演でも、ギターを手にした時のほうが、この音楽の背景がよく表現されていると感じた。ピアノが本分のアーティストであることは疑いようがなく、ギタリストとしてはつたないところもある演奏だったけれど、それでもなおそのギターは、曲の躍動感をより良く伝えていたのである。
サウンド的には様々な要素が溶け合っていて、クラシック、ECM系のジャズから受けた影響の大きさは本人もたびたび語っている。直接話を伺う機会があり、NRTのCDもいくつかプレゼントしたのだけれど、ヘナート・モタのこともちゃんと知っていたり、ブラジル音楽への造詣も深い。ただ、その楽曲、メロディには、それら外の音楽からの影響を感じる瞬間はほとんどない。では一体それは、何でできているのか。
アルゼンチンに、パラナに旅する理由が、これでまた一つ出来てしまった。
2011.01.09
Best Disc 2010 【All Genre】 Joanna Newsom "Have One On Me"
2010年の印象に残った10枚、残りあと3つ。
●Joanna Newsom /Have One On Me
1982年生まれ、カルフォルニア、ネバダ出身の女性シンガー・ソングライター。
5歳のとき両親にハープを弾きたいと頼み、両親もそのことに賛成したものの、地元のハープ教師が年齢的な理由からそれを認めず、代わりにピアノをはじめたそうである(ハープはその後8才から弾きはじめる)。ヴァルドルフ学校で育ったこととか、面白いプロフィールが色々出てくる、なかなかに稀なキャラクター。
フォーキーな自作曲を、ハープを弾きながら歌う20代の女性シンガーで、ヴァン・ダイク・パークスやジム・オルークといったビッグネームの後押しもある、となれば話題にならないほうが不思議なぐらいだが、加えて彼女の場合は、ケイト・ブッシュを引き合いに出される歌声までを持っているのであった。コケティッシュとエキセントリックの間を行き来するような声質で、英語で歌っているのだが、普段耳にする英語の音楽ともどうも様子が違う。音の出所はすごく近くて、耳元で囁かれているように響くのだけど、数秒遅れでようやく意味が頭に入ってくる感じ。猫にテレパシーで語りかけられたとしたらこんな気分だろうか。
ただし本作では、声色のエキセントリックさはやや後退して、あくまで自曲のストーリーテラーに徹している印象。
サウンドもかなり個性的で、ヴァイオリンやチェロ、ヴィオラにヴィオラ・ダ・ガンバを擁する弦楽アレンジをベースに、フルートやクラリネット、オーボエ、バスーンなどの木管、トランペット、トロンボーンの金管も入る。こう書くとゴージャスなサウンドを想像すると思うけれど、実際には音の隙間を大切にした室内楽的アレンジで、特にホーンはかなりピンポイントな配置がなされている。1曲の終盤までじーっとガマンを重ねて、最後の最後にようやく鳴らされる、という具合なのである。
神話的な時間感覚の流れるレコードなのに、見た目も含めたゴシック風味、そしてバンジョー等によってアメリカーナの風も時折もたらされて、ここ10年ぐらいの時流にも符号したマジカルな一枚。
あっ、一枚といいつつ、三枚組なんですけど……。
2011.01.08
Best Disc 2010 【All Genre】 Rufus Wainwright "All Days Are Nights"
Rufus Wainwright /All Days Are Nights
声とピアノ、でもこっちはいわゆる弾き語りで、"UTAU"のコンセプトとはまた全く別の世界観。
クラシックの声楽歌手がピアニストのみをバックに歌うのと同じことを、ルーファスが一人二役でやっている、といえばわかりやすいか。けれども、歌と楽曲はポップス/ロックの範疇にあって、ピアノがクラシカルに振れているというバランス。これ以上何が要るのかといわんばかりの、歌詞と楽曲による私小説世界に思える。(そればっか。)
2011.01.08
Best Disc 2010 【All Genre】 七尾旅人 "Billion Voices"
残りあと、5枚。
●七尾旅人 /Billion Voices
希代の歌声、魅力的なメロディーメイカー、さらにこれほど自在なヴォイス・パフォーマーもそういないのでは。そんなふうに改めて思わせられた、七尾史上最高にポップで、アイデアに溢れた名作。どの瞬間を切り取っても、ヒリヒリするような、圧倒的な生への衝動に満ちている。
本当はその過剰なアイデアを、少し整理して見せることさえできれば……例えば忌野清志郎のように、多くの人々に愛される存在になる可能性さえ秘めていると思う。まあ、そうならなくたって別に構わないけれど。ギターの表現力がもっと増しさえすれば、日本最強のシンガーソングライターになる日もそう遠くないかもしれない。
2011.01.08
Best Disc 2010 【All Genre】 大貫妙子&坂本龍一 "UTAU"
●大貫妙子&坂本龍一 /UTAU
大貫妙子の歌と、坂本龍一のピアノ、それだけ。ただそれだけで、他の楽器、他の音が入る余地はもうない。全く完璧に無いんである。
曲は、多くは坂本龍一のもので、大貫妙子が詞を元々書いていたり、または新たに乗せたりしているものが大半を占めている。
大貫妙子の歌の存在感。抑揚、強弱、声色の使い分けなど、技巧的で、隙のない解釈。加えて、日本語の発声の美しさ。発声と韻、メロディと言葉の相性など、自ら歌詞を書くメリットを最大限に生かしきっている。ちょっと聴き覚えのないぐらい、美しい発声だと思う。
1曲目、これも坂本楽曲の「美貌の青空」。ギクシャクとした、イビツな、鈍い光を放つピアノ。いわゆる<歌もの>作品のピアノ伴奏で、こんなバランスの演奏が他にあるなら、ぜひ聴いてみたい。ほとんど異常な和声感覚と言えないだろうか。不協和音の置き方がどうとか、そういう次元の話ではなく、イマジネーションそのものに猟奇的なものの気配をすら感じる。それはそれは耽美的な世界だけれど、背徳と紙一重の歌詞とも相まって、それを上回る極度の緊張に中毒を起こしてしまう。
2011.01.08
Best Disc 2010 【All Genre】 Natalia Lafourcade "Hu Hu Hu"
●Natalia Lafourcade /Hu Hu Hu
メキシコの森ガール、なんてキャッチコピーも躍っていたような。2010年には再来日もあった。ビヨーク以降の、広い意味でのオルタナティヴを通過した、ポップな女性シンガー・ソングライターの3作目(オーケストラ盤を除く)。これも色彩感とヴァラエティにあふれた楽しいアルバムで、世代も音楽的背景も全く違うけれど、個人的にはブラジルのマリーザ・モンチとアドリアーナ・カルカニョットの姿を、フリエタ・ヴェネガスと彼女に感じたりもする。
ナタリアはほとんどの作詞作曲を行い、ギターや鍵盤、それにおそらく小型パーカッション類も演奏する。後半の4曲では、管弦オーケストラのアレンジまで手がけたり、とかくマルチな才能の持ち主なんである。
僕が観た2010年4月3日、gm tenでのライブでは、基本的に彼女自身によるギターとヴォーカルのみ、ただしヴォーカルにはマイクを2本使用して、片方のマイクではエフェクト&ループを多用する。ギターもまたサンプラーをリアルタイムに使い倒すスタイル。サポート・ギタリストがわりにこのスタイルを採用するとがっかりさせられることが本当に多いのだが、ナタリアの場合、リアルタイムのギターとそのループ音、ヴォーカルの主従関係が1曲のなかで入れ替わる、このセットならではのパフォーマンスを披露していた。で、そんな風にやりたいことは爆発しているけれど、最終的には曲を聴かせたい衝動が勝っている。そしてその楽曲に、私小説的なイマジネーションを感じるのである。
2011.01.08
Best Disc 2010 【All Genre】 Massive Attack "Heligoland"
●Massive Attack /Heligoland
ほの暗く、官能的な、いずれもショートフィルムのような世界観を持つ楽曲揃い。エモーショナルな瞬間を、いかにスタイリッシュに響かせるか。ここに賭けている人たちなのだろうと思う。
そんなアーティストの、当然のように面白いPVはこちらから。
http://massiveattack.com/
2011.01.08
Best Disc 2010 【All Genre】 Sara Tavares "Xinti"
●Sara Tavares /Xinti
カボ・ヴェルデ音楽の若き才能、サラ・タヴァレス。自作自演の女性シンガー・ソングライターだ。生でライブを見た機会はまだないけれど、そのライブDVDを見るだけでも、彼女がいかに優れたパフォーマーか、誰にでもわかると思う。ポルトガル語圏に属するカボ・ヴェルデの音楽は、近年ブラジル音楽ファンからも注目されているけれど、特に彼女の音楽はアフリカン・フィーリングとブラジルの洗練、ポルトガルのサウダーデ感覚を揺るぎなく兼ね備えていて、この国を代表するセザリア・エヴォラ以上に日本の音楽ファンに愛される可能性を秘めている気がする。
いつもいつも大西洋の強い風が吹きつける、ごつごつとした奇景の島々。去っていくことを前提とした港町の音楽。サラ・タヴァレスの出身はリスボンだけれど、移民2世として育った彼女の音楽に、こうした風景が感じられるというのも考えてみれば不思議だ。
特にカボ・ヴェルデに興味がなくても、アコースティック・サウンドによる女性SSWとして、世界のなかでも突出した才能の持ち主だと思う。
2011.01.08
Best Disc 2010 【All Genre】 中島ノブユキ "メランコリア"
ブラジル以外の、2010年ベストの10枚、順不同。
●中島ノブユキ /メランコリア
たとえば、カルロス・アギーレや、ヘナート・モタ&パトリシア・ロバート。国もジャンルも楽器編成もバラバラだけれど、これらがある共通の感覚を持った音楽として語られ始めて、じわじわと話題を集めた一年。ある人はそれを<メランコリック>と呼んでみたり、誰が言い始めたのか憶えてないけれど<静かなる音楽>と呼びはじめたり。個人的には、それらが自然発生的に顕在化した年として記憶される一年だった。共通しているのは、単に静かであるというより、静寂と寄り添うように存在する音楽であるということ。
どんなかたちであれ、普段は話題として取り上げられる機会が多いとは言えないそうした音楽のリリースが活発化して、コンサートにも人が多く集まった。そういう意味で、それらの音楽を愛する者のひとりとして、こんなに楽しい一年はなかった。
○
前置きが長くなったけれども、中島ノブユキは、その中心アーティストとされる音楽家のひとりだ。優れたピアニストで、同時に優れた作編曲家による本作をひと言でいうならば、室内楽、というあたりにやはり落ち着くだろうか。マーラーの「アダージェット」、ピシンギーニャの古典的サンバ・カンサォン「カリニョーゾ」、ビックス・バイダーベックの「イン・ア・ミスト」などのカヴァーに加えて、自身のオリジナルが並んだレパートリーによる、十分に抑制がきいた、ひたすら美しい音楽集。ただし室内楽とはいっても、中世のお城やコンサートホールではなく、東京の路上が似合う音楽。都会の喧騒のなかにあって、一瞬の静寂を取り戻すために。
ここからは勝手な想像の世界だけれど、ピアノとバンドネオン、チェロを中心としたこのような編成だけでなく、オーケストラや、もしくは3ピースのロックバンドでもいいのだが、例えばそんなフォーマットのために書かれた音楽があったとしたら……抑制への反動が主題となるような、より過激な音楽を聴けるのではという気がしている。深読みするなら、そんなざわめきの気配もここには漂っているように思う。

